会社を渋谷から鎌倉に引っ越したわけ 〜鎌倉にマインドフルシティをつくる〜 2019年1月、これまで9年間、東京の渋谷を中心に活動をしていた株式会社enmonoを鎌倉に引っ越した。渋谷では大変おせわになり、多くのネットワークができたので、非常に感謝している。しかし、ここ数年、なんとなく東京の雰囲気があわなくなってきたということに気がついてきた。 わたしが代表を務める、株式会社enmonoは、これまで9年の間製造業を中心に、新製品開発とイノベーションを興すための学校、 zenschool(ゼンスクール) を運営してきた。現在は卒業生として145名のイノベータを育成する会社になっている。 中には富山県で伝統的な金型製造を営んでいた会社が、ぶっ飛ぶほどのすばらしいデザインの美術館になったり、東大阪で加工業を営んでいた会社のオーナーが、製造業の経営者限定の会員制のスナックを作ったりと、これまでと全く異なるビジネスを展開する事例が増えてきている。(卒業生のイノベーション事例は こちら 。) そんな、ぶっ飛んだ発想にたどり着き、それを実現してしまう人たちは、かならずしも、デザインやアート、イノベーションのイメージが強い東京の青山、六本木、渋谷、秋葉原などのキラキラした場所に集う若者たちではなく、むしろ地方の工場や、飲食店などで地道にものづくりや、お客さんに美味しい食事を出そうと地道に努力している、手に職がある方たちなどであることに気がついた。 そう、どちらかというと内向的で、自己表現がうまくない、いわいる「イケてない」人たちが多いということに気がついたのだ。しかし、そのような人たちは、実は自分の内側には巨大な創造性をもっており、その内発的な動機を発掘することで、非常にクリエイティブで情熱的になるということがわかってきた。 いわいる「イケてる系」のクリエーターは、自分の外にある情報を効率的に収集し、編集し創造するのに長けているのに対して、「イケてない」系のイノベーターは、外部の情報ではなく、自分の内なる内発的動機にアクセスして、自分の中から創造性と情熱をとりだし、これまで全く見たこともなかったようなイノベーションを興すということがわかってきた。これまでの卒業生の傾向から「イケてない系」の方が圧倒的にパワフルで、かつ完全にオリジナルなモノが取
IoTとイノベーションの罠(後編) 〜なぜ企業はIoT市場でレッドオーシャン祭りに突っ込むのか?〜 さて、「 IoTのイノベーションの罠(前篇) 」から続いて、論を進めたいとおもいます。 さて、どうして企業は「 Me-tooイノベーション 」に陥ってしまうのでしょうか?その大きな原因は、企業の意思決定プロセスと予算にあります。 意思決定プロセスと予算確保のため 組織で運営している企業の中では、イノベーションを起こすためには予算確保がマストです。サラリーマンであれば、何をするのも「まず予算!」、予算がなければ何もできないという思考に陥ります。 したがって、まず自分の上司である課長、その上の上司である部長、その上の上司である統括部長、その上の上司である事業部長、その上の執行役員、その上の上司である専務や社長を説得するため、漏れ・ダブリのないMECEなロジカルな説明が必要になります。 したがって、以前の記事である、「 イノベーションにおけるロジカルシンキングの罠 」で書いたように、ロジカルシンキング的なプロセスで新規事業や、自社製品開発を企画します。 多重構造の組織の中の人間を「感情」ではなく、「ロジカル」に説得する必要があります。ロジカルシンキングのもっとも重要なポイントは、 ロジックを組み立てるファクトや前例があること 。つまりは似たような製品・サービス・ビジネスモデルが存在しており、すでにそれが成長し収益を上げていることが前提となります。 その前例が結果はともあれ、外から見ると派手で何となくうまくいってそうな感じなのかもしれませんが、それらの事例を詳細に調べてみると、あまりうまくいっていなかったり、あるいはすでに競合が雨後の筍のごとくたくさん現れていたりします。 したがって、Me-too(僕も、わたしも)イノベーションがもっとも効率の良い先行事例をお手本にすることは極めて安全で、ある意味でまっとうな選択肢となります。 助成金確保のため 中小企業で何らかのイノベーションを起こすため、多くの中小企業の方々が活用するのは助成金です。モノづくり関連の助成金は、直近の収益としては見込めないが、将来必要と思われる技術に投資するものや、まだ市場があるかどうかわからないリスキーな