IoTとイノベーションの罠(前編)
〜なぜ企業はIoT市場でレッドオーシャン祭りに突っ込むのか?〜
前々回のブログ記事、『禅に学ぶイノベーションのあり方「脚下照顧」(きゃっかしょうこ) 〜イノベーションは外部ではなく、自分の足元にあり!〜』に対して反響が大きかったので、その続編記事を書こうと思います。
さて、最近はイノベーションとIoTという言葉が跋扈(ばっこ)しています。そのIoT市場を観察することで、企業が安易に求めるイノベーションの罠と、その結果陥るレッドオーシャンの危機について自分なりの考察を試みてみたいと思います。
さて、レッドオーシャンの事例を探すために、どれくらいそのレッドオーシャン祭りになっているのかを調べるために、われらが尊敬するGoogle先生の画像検索で幾つかのキーワードで「IoT」x[「◯◯」で検索をかけてみました。
その1:「IoT」x 「観葉植物用プランター」
まずは「Planter(観葉植物プランター)のキーワードを使い検索にかけてみました。
今流行のIoTプロダクトで、わりと多く見かけるものが、IoT対応の観葉植物プランターがあります。そのレッドオーシャン度合いを確かめるために、IoTとPlanter(観葉植物用プランター)でGoogleの画像検索を掛けてみました。その結果がこちらです。
はい、ご覧になればおわかりのように、ずらっと似たような製品が出てまいります。まだ企画段階のものから、すでに製品化されたものまで、ずらりと出てきております。もうおわかりのように、完全に「レッドオーシャン状態」なわけです。
「天気予報データと連動しつつ湿度、温度などをスマホで管理しながら、たのしく観葉植物を育てたい!」というコンセプトはたしかにわかりやすいのですが、実にわかりやす過ぎます。
何が分かりやすいのかといえば・・
・想定市場規模
観葉植物関連の市場の大きさは、統計データなど調べればすぐにわかります。その市場の何%をこの製品でドミナントすればビジネスとして成り立つのかがわかります。
・利用シーン
観葉植物を、スマホで管理しながら楽しく植物を育て、その成長も記録に残していくという、リアルたまごっちのようなコンセプトは、スマフォ世代にはすぐにピンときます。つまりは説明が殆ど必要ないというビジネスになります。
・必要とされる技術と原価計算
製品のコンセプトとその製品の大きさなどにもよりますが、IoT製品として必要とされるセンサー類、モジュール、組み込みソフト、App側のソフト、通信手段などの選択が、すでに既存の技術の組み合わせで達成できます。限られた選択肢の中でされるため、熟練の開発者になれば、製品のコンセプトとざくっとした要件定義だけ聞かされただけで選べる技術オプションは決定されます。したがって製品の原価計算も比較的容易にできます。
・企業内部への説明と資金確保
上記のような、非常に分かりやすい市場規模、利用シーン、必要とされている技術であるため、企業として取り組む場合でも、ロジカルで合理的な説明が成り立ちます。したがって、それなりの事業計画書を作成して役員へ投資判断を仰ぐことで、開発資金が簡単につくものと予想されます。
その2:「IoT」 x 「スマートロック」
IoTと組み合わせが良いものといえば、スマートロック(鍵)です。このコンセプトの製品が海外のクラウドファンディングサイトであるKickstarterで掲載され、巨額の資金を調達したところから火がつきました。その後、国内の企業もスマートロックメーカーも増えました。
どれくらい同じコンセプトの製品があるのか、その1でおこなったと同じようにGoogle検索で「IoT」「Smartlock」と検索をかけてみました。これもまた非常に多くの競合製品が検索されました。
ご覧になればおわかりのように、似たような製品が海外・国内ともにずらっと出てまいります。この市場も、もうおわかりのようにこれも完全に「レッドオーシャン状態」なわけです。
「ネット接続され、鍵を使わずにスマホのアプリから解錠できます。不特定多数の人間が鍵をもつより低コストで運用できます。また、遠隔解錠も可能です!」というコンセプトは、たしかにわかりやすいのですが、実にわかりやす過ぎます。
何が分かりやすいのかといえば・・
・想定市場規模
既存の鍵市場の大きさは、マーケティングデータなど調べれば直ぐにわかります。たとえば、不特定多数の会員が出入りする商業施設などの件数をかけあわせれば、商業施設の出入り口はかならず一つはあります。ですので、ちょっと調べれば市場規模はわかります。その市場の何%をこの製品でドミナントすればビジネスとして成り立つのかがわかります。
・利用シーン
「スマホをつかって、鍵を解錠する」これはスマホ世代にはすぐにピンときます。どのような機能が使えるのか、製品によって異なるとおもいますが、基本機能は皆同じ。スマホ世代には、その商品コンセプトの説明はほとんど必要ではないと思われます。
・必要とされる技術と原価計算
この製品も、その1で解説したプランターと同じ、製品のコンセプトにもよりますが、IoT製品として必要とされるセンサー類、モジュール、可動部分の機構、モーター、組み込みソフト、App側のソフト、通信手段などの選択が、すでに既存の技術の組み合わせで達成出ます。
限られた選択肢の中でされるため、熟練の開発者になれば、製品のコンセプトとざくっとした要件定義だけ聞かされただけで選べる技術オプションは決定されます。したがって製品の原価計算も比較的容易にできます。
「レッドオーシャン祭り」はなぜ起こるのか?
さて、イノベーションが盛んに言われているこの世の中で、開発時点では「自社製品は非常にイノベーティブで、市場に大きなインパクトを与える」製品だと思っていたはずです。
しかし製品を市場に投入してみると、「非常に似たコンセプトの製品で市場は溢れている(レッドオーシャン)」という状態になっている。なぜこのようことが起こるのでしょうか?
製品開発を行う企画の段階では、インターネットで得られる情報、展示会に参加して得られる情報、その他世の中のトレンド情報などさまざまな情報を集めることになります。これらの外界からの情報を基に製品企画をするわけです。
もちろん、製品開発時ですべての情報を外部に頼るわけではないのですが、製品コンセプトは外部の情報に大きな影響を受けながら企画開発をすることになります。このような製品開発を「Me-tooイノベーション」と言います。
「Me-tooイノベーション」とはまさに言葉通りの「英語のMe too(僕も!)という意味です。このイノベーションは外部からの情報に触発され、ときには外部のイノベーションを模倣したイノベーションのことです。「Me-tooイノベーション」に関してくわしくはこちらのブログを御覧ください。
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立ち上がりが早い一方で、完全にオリジナルのアイディアから生み出された「内的イノベーション」の製品やサービスと比較して、その後の伸びが期待できず、あとは改善程度のイノベーションで終わってしまいます。
その結果、レッドオーシャンに巻き込まれ製品やサービスののライフサイクルは極めて短くなっていく可能性があります。
では、具体的にどうすれば良いのか、具体的なアプローチ実践方法は、さらに後編で詳細に説明をさせていただきます。【後編へと続く】
またこのような考え方基づいて、イノベーティブな製品開発を行うための学校、「zenschool(ゼンスクール)」を提供しておりますので、体験会なども随時開催しておりますのでもしよかったら覗いてみてくださいませ。
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