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会社を渋谷から鎌倉に引っ越したわけ


会社を渋谷から鎌倉に引っ越したわけ
〜鎌倉にマインドフルシティをつくる〜

 2019年1月、これまで9年間、東京の渋谷を中心に活動をしていた株式会社enmonoを鎌倉に引っ越した。渋谷では大変おせわになり、多くのネットワークができたので、非常に感謝している。しかし、ここ数年、なんとなく東京の雰囲気があわなくなってきたということに気がついてきた。

 わたしが代表を務める、株式会社enmonoは、これまで9年の間製造業を中心に、新製品開発とイノベーションを興すための学校、zenschool(ゼンスクール)を運営してきた。現在は卒業生として145名のイノベータを育成する会社になっている。

 中には富山県で伝統的な金型製造を営んでいた会社が、ぶっ飛ぶほどのすばらしいデザインの美術館になったり、東大阪で加工業を営んでいた会社のオーナーが、製造業の経営者限定の会員制のスナックを作ったりと、これまでと全く異なるビジネスを展開する事例が増えてきている。(卒業生のイノベーション事例はこちら。)

 そんな、ぶっ飛んだ発想にたどり着き、それを実現してしまう人たちは、かならずしも、デザインやアート、イノベーションのイメージが強い東京の青山、六本木、渋谷、秋葉原などのキラキラした場所に集う若者たちではなく、むしろ地方の工場や、飲食店などで地道にものづくりや、お客さんに美味しい食事を出そうと地道に努力している、手に職がある方たちなどであることに気がついた。
 そう、どちらかというと内向的で、自己表現がうまくない、いわいる「イケてない」人たちが多いということに気がついたのだ。しかし、そのような人たちは、実は自分の内側には巨大な創造性をもっており、その内発的な動機を発掘することで、非常にクリエイティブで情熱的になるということがわかってきた。

 いわいる「イケてる系」のクリエーターは、自分の外にある情報を効率的に収集し、編集し創造するのに長けているのに対して、「イケてない」系のイノベーターは、外部の情報ではなく、自分の内なる内発的動機にアクセスして、自分の中から創造性と情熱をとりだし、これまで全く見たこともなかったようなイノベーションを興すということがわかってきた。これまでの卒業生の傾向から「イケてない系」の方が圧倒的にパワフルで、かつ完全にオリジナルなモノが取り出せることに気がついた。

 活躍している卒業生をみて、外ではなく、自分の内発的動機に基づいた絶対的なクリエイティビティが潜んでいるのではないかということであった。そう、ファクトの世界ではなく、人の心の中に莫大な創造性が眠っているのだ。


外発的動機か、内発的動機か。
 
 そんな、内発的動機の可能性に気が付きつつ、会社を移転する決断の決定打は、とある仕事に関連したワークショップを東京と、鎌倉で開催したことからだった。その時、われわれが主催する東京のワークショップに参加したのは、大手企業の経営企画担当などで、イノベーションの可能性を情報収集をしにきたのだという。しかし、多くの参加者からは、自分の肩書を外して世界観を持つことができず、ファクトに基づいた、型通りの思考パターンの質問(正直面白くない質問)がつづいた。

 一方、鎌倉でワークショップを行った場合、フリーランサーや、スタートアップ、そして一般の企業に勤めている方が参加されたのであるが、イノベーティブな新規事業になるかどうかは別として、ファクトには基づいてはいないが、自分の内発的な動機から出た質問の多くは、対象が内発的動機にもとづいて「自分ごと」化されており、インタラクションも非常に刺激的なものであった。

 この違いはどこにあるのだろう・・といろいろ思考してみた結果、東京と鎌倉それぞれの場所に引き寄せられた人の意図が、「外発的動機」であるところの、外からの指示や会社からのミッションにもとづいているか、「内発的動機」であるところの自分の中のワクワク感に基づいているかそこに違いがあるようだという結論に達した。

 「内発的動機」。やはり、コンクリートのビル空間に囲まれ、都会の様々なノイズに囲まれた環境にいると人間の感覚は自然と閉じてしまうのだろう。「感覚」を閉じてしまうと、自分のからだの反応に鈍くなる。結果として自分の内発的な動機「ワクワク感」に気がつきにくくなるということなのであろう。

 一方、鎌倉では自然も多く、感覚もオープンになる。その結果が、前に書いたワークショップに対する意識の違いになったのであろうと思う。それに気がついた時、ワーキングタイムのほとんどの時間を過ごす場所を、さまざまなノイズや閉鎖的な空間のため内発的動機に気が付きにく東京を働く場所に選ぶという選択肢は消えた。そして渋谷から鎌倉への会社の移転を決意したのだ。


自宅の材木座の海岸から富士山を望み、自然の感覚を開放する。


Mindful City Kamakura計画

 わたしはZen2.0という禅とマインドフルネスの国際カンファレンスを、多くの仲間たちと2年前(2017年)から立ち上げ、北鎌倉の建長寺という由緒正しい寺をお借りして、開催させていただいている。そのカンファレンスのキーコンセプトになっているのが「マインドフルシティ」という概念である。

「マインドフルシティ」この言葉の意味は、禅やマインドフルネスに惹きつけられ、世界中のクリエイティブな人たちが鎌倉に集まり、新たなビジネスを生み出すというコンセプトである。この言葉は、禅とマインドフルネスの国際イベントを企画していた2015年の暮れに、鎌倉駅前のワタミで、わたしと、鎌倉マインドフルネス・ラボを経営されている宍戸さん、現在、雑誌「WIRED」日本語版の編集長の松島さん(当時はNHK出版)、和服販売の鈴木さんという4名の仲間たちとの居酒屋トークの中で出てきコンセプトだった。
 
 初期メンバーの想いは、そもそも「マインドフルネス」の根源の一つは禅があるはずで、日本の禅の発祥地である鎌倉から世界に、禅をもっと発信していきたいという思いであった。そして、外の情報に惑わされるのではなく、自分自身を見つめることで本当に価値の有るものを自分自身から取りだすようなクリエイターが世界から集まるそのような都市にこのまちをしていきたい、そんなまちのコンセプトが「マインドフル・シティ」という言葉につながったのだ。

豊かな海と、山々にかこまれたマインドフルシティ鎌倉から富士山を望む
Mindful CIty Kamakuraの4つのコンセプト

鎌倉がマインドフルシティたる6つの理由

1.スタートアップインフラ
  1-1.充実した食環境・保育環境

 鎌倉には着々と、スタートアップ向けのインフラが整いつつある。その大きな原動力が株式会社カヤックが推進する「まちの◯◯」シリーズという、事業者向けのインフラの整備である。カヤックは本社を鎌倉においている。鎌倉には飲食店は多いが、そのほとんどが観光客向けで価格も割高だ。鎌倉市内の企業で働く人間は、手頃で短い時間で食事ができる店が好ましい。

 しかし、観光客に人気の飲食店では長い行列ができるので、毎日行列に並ぶほど時間を無駄にできない。短時間でなんとか美味しい食事にありつけないのか?鎌倉の企業ではたらく人の昼食問題、この課題を解決したのが、「まちの社員食堂」だ。
 この、まちの社員食堂は週替りで鎌倉の人気店のメニューを食べられる仕組みになっており、一般的な社員食堂と異なり、メニューに飽きない。名刺や社員証などで鎌倉で働いていることが証明できれば、利用できる仕組になっている。鎌倉でスタートアップとして起業したとしても、食事が充実していないと長続きはしないのでこれは、非常にありがたい仕組みだ。

まちの社員食堂

鎌倉市内の飲食店から週がわりで提供される社食。
毎週鎌倉の人気店のメニューが提供されるので、毎日が楽しみで飽きない。
     
この「まちの◯◯」シリーズのインフラとして、「まちの保育園」という鎌倉市内では働く家庭向け共同の保育園がスタートしている。また、これからも「まちの社員寮」、「まちの人事部」などぞくぞく準備中の模様だ。くわしくはこちらの鎌倉資本主義のサイトをご覧いただきたい。スタートアップの人間が、仕事しやすい環境をつくっていただいて、カヤックさんには感謝の限りである。


  1-2.超高速インターネット回線

 あと、もう1点、スタートアップにはかなり重要なインフラとして、超高速インターネット回線がある。まだ日本全国では展開していないが、最近一般向けに提供を開始したソニー系列のプロバイダーのニューロも、幸運なことに 鎌倉でも利用可能となっている。 

 本社を鎌倉へ移転したtと同時に、鎌倉へ引っ越しをきめた同僚の家もニューロのインターネットを導入しており、まだ利用者が少ないニューロは鎌倉ではかなりのスピードが出ているようだ。

 会社の引っ越しで、自宅も鎌倉に引っ越した同僚のデータによると、ダウンロード900M/s、アップロード600M/s(これまでの約10倍程度)でるので、オンライン会議などの打ち合わせを行い際に、音声の遅れや、画面のフリーズがストレスになっていたが、このスピードであれば東京とでもストレスフリーで会議できるとのこと。

 わたしもニューロ光を導入したが、同じ鎌倉市内同士でニューロ経由で接続した場合、まるで同じLAN回線上の感覚で利用できる。この回線スピードはスタートアップにとって魅力であろう。実際に自宅でテストところ、チャンピオンデータで1.1G/sの数字が出た。(※スピードテストのアプリによってデータは異なります。)

自宅で記録したネットスピードテストの結果。
1.1G/sはチャンピオンデータかもしれないが、
それでも平常運転で400M〜600M/sは出ている。



2. 「感覚」を開かせるゆたかな自然

 海と山に囲まれた鎌倉には豊かな自然がある。自分自身はすでに鎌倉に住みはじめて12年経ているが、自分の12年前の自分と、今の自分と比較すると驚くほど変化していることにあらためて気がついた。

 12年前の自分はというと、もともとは右脳系だったが、東京で仕事しているときは意識して左脳に偏って演じていたと思う。イノベーション研究者としてだけではなく、企業人として、自社を他社とどう差別化するか、どう競争優位に闘っていくのかばかりを考えたいたし、会社の中ではうまく立ち回り、組織の中で政治力をつけるのかばかりを考えているような、典型的な組織人であり、自身の保身に走るような極めて自己中心的な存在であった。そして、ロジックで説明できない感覚的なものや、スピリチュアルなものは、あえて声に出してバカにするようなタイプだった。(思い出すと冷や汗が出る)

 そのようにワーキングタイムのほとんどを東京で費やし、取引先や同僚との食事や飲み会なども、東京の世界で完結させることで、自分の感覚が「閉じて」しまっていたことに気がつかなかったし、そもそも「感覚」を開く必要もなかった。

 しかし、住処を鎌倉に移し、自分の感覚を少しづつ開くようになって、仕事の仕方も少しづつ変化してきた。仕事のすすめ方も左脳的なロジック思考にアドオンして、自分の直感や感覚的な部分も重要視するようになってきた。そう、本来の自分自身にすこしだけ近づけたのだ。
 
 そして、今年に入り会社を鎌倉に移し、これまでの朝起きてすぐバスに飛び乗り、そのまま電車で移動、東京のオフィス街で働くという、感覚を閉じて一日をすごすのではなく、朝の静かな空気感の中で鳥の声、波の音ききながら1時間ほど瞑想をおこない、自転車で駅近くのオフィスに自転車通勤するようになった。そのようなライフスタイルに変化したことで、東京のビジネス環境では出てこない良い発想にたどりつくことが多くなっていると感じている。

由比ヶ浜から望む江ノ島
豊かな自然が閉じている感覚を開かせてくれる


  海や山など大いなる自然が近くにあり、日常的に自分のセンサーである、目・耳・鼻・口・体感覚に、自然の感覚をとりいれ、働きかけることができる環境があることが、あたらしい発想や、イノベーション、そして最重要な自分の内発的動機に気づくのに非常に重要だ。鎌倉はイノベーションの根源である、内発的動機にアクセスしやすい環境が整っていると感じている。


3.鎌倉の空気をつくる、神社・寺・教会とマインドフルコミュティ
 
 鎌倉には多くの、神社、お寺、キリスト教会など豊富な宗教施設がある。鎌倉という町を形作る上で、これらの宗教施設の役割は非常に大きいと言える。街全体のトーンが非常に落ち着いたものになるからだ。

 鎌倉には、3.11の鎌倉宗教者会議という、神道、仏教、キリスト教という宗教を超えて、互いの宗教を学んでいこうという会議がある。この会議のように、あらゆる領域を超えてつながっていこうという雰囲気がこの街には溢れている。鎌倉には、あらゆる宗教、人種、年齢、性別、すべてを包み込み融合して行こうという、あたたかく、大きな流れが渦巻いている。この雰囲気は言語化はむずかしいのであるが、我々はそのような街の雰囲気が「マインドフルシティ」をつくる非常に大きな要素だと考えている。

 お寺などでは定期的に坐禅会を実施しており、そこに参加をさせていただいたり、また当社が新たな登記をおこなった「旅する仕事場」というコワーキングスペースでは、毎月1回、臨済宗の僧侶のかたからの本格的な坐禅会で指導をしていただけるという幸運にも恵まれている。そのような体験のなかから、禅に対する理解を深め、それを自分の心の整理整頓や、経営者としての心構えなどの参考にさせていただいている。

 また、わたしは企業活動とは別に、Zen2.0という北鎌倉の建長寺という760年以上伝統のあるお寺をお借りして、世界の禅とマインドフルネスの有識者を世界中からお呼びして対話をするカンファレンスを、最初4人のなかまと立ち上げた主催者の一人である。このZen2.0に登壇者として参加し、鎌倉に大きなインパクトを受け将来的に鎌倉への移住をきめた米国の大学教授のもいるほど海外からの参加者にとっては、鎌倉は魅力的に映るらしい。

 このカンファレンスの企画を通じて、日本、米国、ヨーロッパ、アジア諸国の、僧侶・瞑想実践者・マインドフルファシリテーター・幸福学研究者・ボディーワーカー・脳科学者・AI研究者・意識変容研究者・ビジネスコンサルタント・アーチスト・アスリートと交流をしてきた。そして、イベントをいっしょにつくりあげることで一体感をもった、マインドフルなボランティアの方々とのコミュニティをつくりあげることできた。

 このコミュニティのメンバーは、鎌倉市内を中心に遠くは京都などのメンバーなどもふくまれている。Zen2..0コミュニティと呼んでいるが、あらゆる分野で非常にタレントをそなえたメンバーがコミュニティのメンバーになっていることがポイントである。メンバーの中には、西田哲学の博士号取得者、コミュニティリーダー、瞑想実践家、仏教研究者など多種多様である。わたしはこのマインドフル・コミュニティが、将来的に鎌倉をマインドフルシティにする大きな原動力になるとも感じている。

 このコミュニティは、実質的に毎年のZen2.0というイベントを企画・運営しつつ、同時に定期的に瞑想会や、泊りがけの合宿なども行い、対話を実践するなど、メンバーどうしの心のケアをおこなって、実質的なサンガ的な意味合いのコミュニティに成長しつつある。

わたしが共同代表を務める一般社団法人Zen2.0によって行われた
2018年9月開催の禅とマインドフルネスの国際カンファレンス「Zen2.0」の登壇者とボランティア


4.コンパクトシティそして、オープンネス、人の多様性。

 鎌倉は、コンパクトにまとまった街にもかかわらず、とにかく人の多様性が半端ない。

 東京や大阪、京都などの大都市にもいろいろな方々がいるので、意識的に動けば多くのネットワークできるだろう、しかし、鎌倉のポイントは街がコンパクトなので、意識的に動かなくても、非常にバラエティに富んだ方々とのネットワークが自然にできあがってしまうということだ。鎌倉のように、駅を起点とし、自転車で移動できる範囲の中に、多様な方々が集い、ゆるやかなネットワークを作っている街はないのではないだろうか。

 駅周辺には、お昼休みに、鎌倉で働いている方々が食事に行く店があり、主要なメンバーはだいたい顔見知りなので、ときには「まちの社員食堂」で、銀行前で、カフェで、駅に行く途中などでばったり出くわすことが多い、おもわず立ち話しになってしまう。立ち話しから、「こんど一緒にイベントしましょう!」とか、「コラボレーションしましょう」などの、話しへと容易に展開することも、よくあることだ。

 僕の周辺にあつまっている方々の肩書はかこんな感じ。まわりをみまわしただけでも。これだけの方々がいる。

 ヒッピー系コンサルタント・仏師・市役所職員・ハードウェアスタートアップ・パワーストーン販売事業者・アプリ開発者・スナックのママ・WEB開発会社経営者・お坊さん・アーユルヴェーダ料理研究家・瞑想実践者・国内の大学教授・米国の大学教授・尺八演奏家・キリスト教シスター・映像ディレクター・市議会議員・シェアハウスオーナー・アカシックリーダー・写真家・組織開発実践者・雑誌編集者・戦略コンサルタント・飲食業経営者・ビジネスコーチ・投資家・人事専門家・小説家・グラフィックデザイナー・同時通訳者・コワーキングスペース運営者・建築家・アーティスト・スピリチュアルヒーラー・ミュージシャン・カイロプラクティック医師・神道研究家そして、そこにときどき日本の他の地域や、海外からの来訪者などが集い新しい出会いが産まれる。

 そして、それぞれの方がほとんど経営者か、フリーランサーなど、小さいながらも自分でビジネスを行っている方々がほとんどある。組織によらず、自分自身で判断して、時間やお金を使える人たちが、有機的につながっていくことは、新しいイベントや新規事業を高速で立ち上げようとした場合、非常に有効である。

スタンフォード大学から「マインドフルシティ鎌倉」を学びに1週間滞在


  海外から、日本の禅文化を学ぼうとする外国人も増えている。2019年の3月22日から29日にかけて、ANAの協賛を得て米国スタンフォード大学のマインドフルネスを基盤として教育を実践しているスティーブン・マーフィー重松教授と、スタンフォード大学ハートフルネスラボの学生7名が鎌倉の禅文化を体験するために鎌倉に1週間滞在をした。
 
 きっかけは2年前のZen2.0にスティーブン・マーフィ・重松教授が登壇者として登壇したことで、鎌倉の禅文化に興味をもっていただき、鎌倉とスタンフォード大学で短期の交換留学プログラムができないか?という話しなり、ANAの協賛を得て私が共同代表理事をつとめる一般社団法人Zen2.0でそれをサポートすることになったのだ。

スタンフォード大学スティーブン・マーフィー・重松教授と7名の学生、ANA社員と鎌倉市民との対話ワークショップを終えて

 学生たちは鎌倉で本格的な茶道体験、坐禅体験などをしつつ、鎌倉市のマインドフルな行政「マインドフル・ガバメント」を学ぶため、鎌倉市長とも対話をするなどした。また、マインドフルシティ鎌倉をつくるためと「旅x学び」を、ANA社員と鎌倉市民との対話を通して各自発表するなどして、ともにマインドフルシティをつくるためのマインドフルブレインストーミングを行い、いくつものアイディアをだすなどした。

 このワークショップでは、ブレインストーミングを行う前に十分なマインドフルワークを行い、安心・安全な場作りができていると、言語や文化を超えても高い質のアイディアをだせることが体感できた。

 このワークショップに参加して、スタンフォード大学の学生も多くの学びを得たと感じているが、スタンフォード大学一行にさまざまな学びの機会を提供した運営者側が多くの学びの機会を得たと感じている。

マインドフルシティ鎌倉の可能性に関して、鎌倉市の松尾市長を表敬訪問し対話をしたスタンフォード大学スティーブン・マーフィー重松教授とハートフルネスラボの学生7名。

また、スタンフォード大学一行は、幸運にも鎌倉市長を表敬訪問させていただき、マインドフルシティ鎌倉の可能性、マインドフル・ガバメント(マインドフルな行政のあり方)に関しても意見交換をおこなった。学生たちは、市長との意見交換の中でマインドフルシティ鎌倉ならではの松尾市長の「サーヴァント型リーダーシップ」のあり方を感じ取っていた。日曜日という休日に貴重な時間をいただいた松尾市長に心から感謝を申し上げたい。
 

5.鎌倉市民が集い、街を良くするコミュニティ「カマコン」

  わたしは、個人的に5年ほど前から、鎌倉市民の非営利活動の場、「カマコン」のメンバーとして参加している。カマコンは当初はIT起業家のネットワークとしてたちあがったが、現在は多種多様な職業・肩書の方たちのあつまりであり、毎月1回の定例会には4つ程度の鎌倉街を良くしたいという想いの詰まったプレゼンテーションがおこなわれ、そのプレゼンテーションに対して集まった参加者からブレインストーミングを行い、アイディアを出すということをおこなっている。プロジェクトによってはクラウドファンディングで資金を募って活動資金にしたり、会社ができたり、Zen2.0のように国際的なイベントに成長したりする。

 スタート当時は、基本的には企業しか参加できなかったのであるが、自分は一市民として参加したかったので、途中から市民として参加をさせていただいた最初のメンバーとなった。

 カマコンでは鎌倉に特化したクラウドファンディングの運営メンバーとなったり、日本全国にカマコン的な活動を広げるメンバーとなり、日本中のさまざまな地域を訪問してブレインストーミングのお手伝いをしたりして、それらの地域との人的なネットワークをつくりあげることができるように活動をしてきた。そして、現在では、ブレインストーミングに特化したファシリテーターとして参加しており、毎回のブレインストーミングにはできるだけ多くの数のアイディアを出すということを目標に活動している。先に紹介した、「Zen2.0」もこのカマコンでプレゼンテーションを行い、生み出されたプロジェクトである。


6.マインドフル・ビジネス企業の集積

 現在、鎌倉周辺には人の心に気づきを与え、人間のこころのアップデートを促すマインドフルな要素を含んだ事業「マインドフル・ビジネス」の企業が集積しつつある。ここに上げた企業群はあくまでも一部であるが、これらのマインドフル企業は、人間の意識変容から組織開発、コワーキングスペース、アカシックリーダー、IT企業、ヨガ、学童、モノづくり、ゲストハウスなどさまざまである。

企業・組織
◯トランステック / マインドフルネス
ヒューマンポテンシャルラボ
鎌倉マインドフルネスラボ
ThinkSpace

◯スピリチュアル
ニルバーナパワーストーン
中谷由美子

◯ヨガ・ボディワーク
SUGATA
aosola

◯ハードウェア
VIE STYLE
INAHO株式会社
ファボラボ鎌倉

◯IT/WEBサービス/マーケティング
面白法人カヤック
村式株式会社
Huber
JumpStart
Buddying

◯教育
TIDE POOL

◯ホテル/ゲストハウス/レストラン
Webase
亀時間
鎌倉ゲストハウス

 これら紹介をしたのはほんの一部の会社であり、昨年からさらに多くのマインドフル・ビジネスが鎌倉に集結しつつある。

「モノ→金融・IT→ココロ」:鎌倉に世界の未来産業を見る「マインドフル・エコノミー」


 これまで紹介してき要素をまとめると渋谷から鎌倉に会社を移転した理由は4つの大きなポイントになる。

1. スタートアップ向けインフラの充実
2. 心を包み込む豊かな自然
3. さまざまな宗教施設と慈愛のマインドフルコミュニティ
4. 多種多様な才能をもった人的資源とマインドフルテックに関連した企業群

 これらのポイントは、わたしが起業した9年前に起業した時は、必ずしもすべて整ってはいなかったが、その後、我々ががたずさわってきたモノづくりの産業のおおきな変容があった。それを以下に紹介したいとおもう。

 我々が渋谷から鎌倉へオフィスを移動したもう一つの大きな理由は、それは日本の産業のストリームが徐々に「モノ」(製造業)→「金融・IT」(金融業とIT業)と変化してきて、その先にあるのが「ココロ」(人間の心の変容)と変化にあるとひしひしと感じているからだ。「ココロ」(人間の心の変容)そのようなものが産業になるのか?実際多くの方にそのような意味のことを言われてきたし、日本のVC界隈からも、「マインドフルネス」銘柄はまず投資対象にならないという噂を聞いたばかりだ。

 しかし、われわれは将来的に非常に大きな産業になると感じている。その中心地が鎌倉になる、そう直感したから本社を鎌倉に移したのである。

  当初、enmono社の対象としてきた産業は中小製造業をメインとする、ものづくり企業であった。伝統的な中小企業だけではなく、いわいるメイカーズ的な企業もあった。その中からいくつか成功事例を生み出すことができた。その後我々は資金調達を行うためにクラウドファンディング事業を開始し、ITビジネスとしての事例もいくつか実績をつくることができた。
 
 そして2年ほど前から、イノベーターの心に焦点を当て心を整え、本来自分自身がやりたいことに気がつくことによって、我々のサポートなしに事業が成長することに気が付き、心の整え方と具体的にそれをどのようにして事業にするのかという「ココロ(心)」の部分に注力するようになってきた。その集大成が我々がメインの事業としているイノベータ育成講座、zenschool(ゼンスクール)である。

 しかし、ココロの部分にそれほどのビジネスチャンスがあるの?と訝しく思うかたもいると思うだろう。実際多くのVCがマインドフル銘柄には懐疑的だろう。日本のテック企業で「マインドフルネス」関連で大きな収益をだしていると聞いた企業はほとんど無いからだ。しかし、ほとんど儲からないところにまさにブルーオーシャンが広がっているのである。



 このような日本のマインドフルネスを巡る環境を尻目に、米国では日本の数年先をいっているようだ。2019年2月7日のスタートアップ企業の情報を発信している米国Venture Beatの記事によると、マインドフルネスのApp開発企業Calmは96億円の資金調達を完了したということだ。

 意外かもしれないが、この会社は創業してから派手ではないが、地道に数年にわたって確実に収益をだしつつあり、さまざまなバリエーションのマインドフルアプリを開発している。VCの想定した企業バリエーションは1,000億円を超えたということである。マインドフルネス関連企業として初のユニコーン企業となったということである。

マインドフルネス銘柄で1000億円を超えるユニコーン企業入りを果たしたClamの時事
(出展VentureBeat)

 この企業の成長の事例は単なる幸運な一事例なのだろうか?

 いや我々はこれは、これに続く企業がまだまだ出てくると感じている。実際これに続くような人の心のバージョンアップをめざす企業群は米国ではたくさん出てきている。そのような企業群を米国ではどのように呼んでいるのか? 米国では、これを「Transtech(トランス・テック)」呼んでいるのだ。昨年の11月に米国のシリコンバレー、パロアルトで「Transtech Technology Confrence」というトランス・テック業界向けのカンファレンスが開催された、まだ1,000人規模の小さなカンファレンスであるが、このカンファレンスに鎌倉の仲間が参加したことで、カンファレンスの詳細な情報を聞くことができた。

 知り合いのITジャーナリストの湯川さんがこのカンファレンスに参加して、非常にわかりやすい記事を書いていて、将来このカテゴリーの市場はなんと330兆円になると想定されているとのことだ。カンファレンスのくわしい内容に関しては、こちらをご覧いただきたい。また、トランステックの技術に関してはこちらの動画が非常に参考になる。

各産業セクターのTranstechの市場規模の予想
Transtech Technology Confrence 説明動画よりキャプチャ
マズローの5段階欲求説とその先にある第6段階の「自己超越欲求」
Transtech Technology Confrence 説明動画よりキャプチャ

 「市場規模330兆円?」と聞くとなんとなく眉唾(まゆつば)感がある数字であるが、実はこの数字が昨年の11月に、パロアルトのカンファレンスで発表される3年前の2015年に、我々が10年後の2025年にこの市場規模について試算した結果が211兆円だった。この数字を試算して、公にリリースしたのであるが、ほとんどの反応が「信じられない」「まゆつばだ」という反応であった。しかし奇しくも、米国で試算されたトランステックの世界市場規模も同等に数百兆円という規模になったこと自体、この市場の可能性を示していると考えている。

 我々はこのカテゴリーの市場を。「マインドフル・ビジネス」と命名していた。具体的なマインドフルビジネスの定義と内容に関してはこちらのページを参考にしていただきたい。

鎌倉がマインドフル・ビジネスの中心地へ

 われわれが定義する「マインドフル・ビジネス」の日本での震源地にこの鎌倉がなるであろうと想定している。マインドフル・ビジネスの詳細の定義に関しては、こちらを読んでいただきたいのであるが、あえて定義すれば「人の心の能力向上を支援するビジネス」ということになる。

マインドフル・ビジネス〜心の能力向上を目的としたビジネス〜

 これまでは、人の心の安定や気付きをあたえることは宗教が大きな貢献を果たしてきた。しかしながら、これからは宗教だけでなく、民間の商業活動を通じて人が心の安泰や、気づきなどを得ようとする人々は増えていくだろうと想定している。

 なぜならば、宗教だけに心の安定をもとめる時代から、心の安定の要素を含む数多くのアクティビティが増えているからだ。たとえば、ヨガ、瞑想、対話の講座、ジョギングやトレイルランニング、太極拳、呼吸法、ヨットなど体と心にかかわるスポーツやアクティビティは宗教だけしかなかった時代と比べ飛躍的に増えている。


伝統に裏打ちされた叡智があって初めてテクノロジーのレバレッジが効く


筆者が入居しているコワーキングスペースのメンバーと一緒に、定期的に行っていただいている北鎌倉浄智寺での坐禅会後の1枚。

  鎌倉には多くの神社・寺・キリスト教教会などの伝統的な宗教施設がありまた、カヤックをはじめとしたITのスタートアップが少しづつであるが増えてきているが、インターネットをはじめとするテクノロジーがうみだされたのは、インターネットの前身のARPANETからもカウントしても、せいぜいここ50年である。

 それに対して、鎌倉にある宗教に目を向けると、鎌倉における神道は1000年以上、また仏教も800年近くの歴史がある。「人の意識の変容」という分野では、それぞれの宗教はそれだけの年月、多くの臨床で試行錯誤をして、各体系のなかで独自の修行法を編み出していった。そしてその修行法は体系化され、完成されていった。

 現代に生きる我々はそのそれだけの年月をかけて生み出された叡智を受け継ぎつつ、インターネットやAIなどのテクノロジーの力を借りながら、それらの意識変容のための技法をどのように一般化させていくのかを試みる流れの中にあると言ってよいだろう。

 この街はこれまでの伝統的な宗教をベースに「マインドフルシティ」へと変貌を遂げようとしているのだ。当社は、この鎌倉でマインドフルビジネスを興す人を集め、支援することで新しい産業を起こすべく渋谷から鎌倉へ本社を移転したといっても良い。




 マインドフル・ビジネスに関しての詳細は、こちらを参照いただきたいが、ポイントはこれから先進国になればなるほど、AIやロボットの普及発達によって、労働集約的な仕事はどんどん少なくなっていく、その次にくるのは知識産業である、会計士、税理士、弁理士、弁護士などであるが、実は一定のルールに基づいた作業こそがAIの得意中の得意な分野であり、ルールに基づいた仕事自体もAIに置き換わられていく。

 その結果、本来個人の持つ特有の心の特性により焦点があたることになる。その人間がどのような心の特性を持っていて、どのような夢があり、どのようなことを成し遂げたい人間なのか、そこに焦点が当たる時代になる。「自分とは一体何者か?」や、「自分が本当になにをしたいのか?」ということに気がつくことが、創造性の源になる。さきほどから何回か言及している内発的動機という部分である。

 また、それ以外でも、心のもつ可能性である、慈愛心・集中力・レジリエンス・EQなどをアップデートしていくことを支援する仕事が、マインドフル・ビジネスの中心的な考え方になる。

 これまでの時代は、宗教が人間のこころのアップデートの手伝いをしてきた、しかし、これからはひとの心のOSを書き換えるのはかならずしも宗教だけではなく、さまざな社会人向け教育、ワークショップ、時にはAIやロボットの力をかりた総合的な取り組みが必要であり、それがビジネスとして次第に大きくなっていくだろうということである。

 このような人の心のアップデートを支援する要素をもったビジネスが、すでに、ほとんどすべての産業の中に存在しているが、それを「マインドフル・ビジネス」ということでまとめたわけである。そのように人間の心のアップデートを推し進める部分は、多くの産業の中にふくまれているが、今後はそのパーセンテージが、例えばこれまで数パーセントであった部分が、数十パーセントまで上がっていくのではないかという予想である。

鎌倉の材木座にあるカフェで、海に沈む夕日を眺めながらのワーク
こういった「感覚」を開かせるワーキング環境も新たな発想を生み出す重要インフラとなる。

 このブログの中で書いた「マインドフル・ビジネス」や「マインドフル・エコノミー」というアイディアの着想を得た2015年頃ではあくまでも仮説でしかなかった。しかし、先にも書いたように、非常に近いコンセプトが米国のシリコンバレーで開催されたカンファレンスの中で、330兆円という市場規模が提示されたり、われわれが定義していた「マインドフル・ビジネス」とほぼ同じ定義で「トランステック」という考えが示され始めている。

 「101匹目の猿」という有名な架空の寓話を聞いたことがあるかとは思うが、この架空の寓話のように、一方で米国シリコンバレーと、太平洋を挟んだ日本の鎌倉でほぼ同じような着想を得て、ほぼ同じような企画の「Transtech Technology Confrence」と、鎌倉で「Zen2.0」というカンファレンスを開催していたということが非常に奇妙に思える。実際当社が鎌倉に移転した直後の2月、シリコンバレーにあるトランステックを開催するNPOに訪問して、人類の意識を巡るビジネスの可能性について対話をしてきた。

 シリコンバレーの考え方は、かなりテクノロジーよりの考え方であった、一方、鎌倉の我々の考え方は、伝統的な神道・仏教・キリスト教などの宗教で培ってきた人類の叡智をベースにしつつ、そこにテクノロジーでレバレッジをかけ、人類意識のアップデートを広く普及させるという考え方の違いはあったものの、人類の意識進化に関連したこの市場は我々が想像していた以上に急速に成長していくだろうという部分では、ほとんど同じであろうという結論に達した。

 この鎌倉が、伝統とテクノロジーそして豊かな自然をそなえた真の「マインドフルシティ」として次の10年に大きな飛躍する可能性をもった街として、Zen2.0やカマコンで知り合った仲間たちとこの街をアップデートしていければと考えている。

 その時までには、すべての世代がともに助け合って、活き活きと生活しながら、慈愛に満ちたマインドフルなコミュニティを兼ね備え、世界から禅やマインドフル・ビジネスに関心をもったクリエーターや起業家たちが訪れる、落ち着きがあり、かつ活気のある街を目指して活動をしていきたい。

2019年4月9日
三木康司

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マインドフル・ビジネスとそれを生み出すイノベーション手法に関しては自著、『「禅的」対話で社員の意識を変えた トゥルー・イノベーション 』にて詳しく解説をさせていただいています。もしご興味があれば手にとっていただければ幸いです。

 




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「マス・モノづくり」の時代から「マイクロ・モノづくり」の時代へ

もうすでに、多くの方々が気がついているとおもうが、量産分野での日本のモノづくりの使命はおわった。

先日、30歳~40歳代の日本の錚々たる大手メーカーの購買部門の一線で活躍するバイヤーの方々が集う非公式の会に参加した。そこでの結論も、日本国内での量産案件はすでに終了しているという論が主力となった。

その会には業界、業種を超えた方々が集っていたが、それが議論の終着点ということはみなが見えていたとしても、恐ろしくてそのことに皆触れられないような雰囲気があった。

大手メーカーの第一線で「購買」という、モノの動きが一番見える部署の方々が、肌感覚で掴んだ動きから類推した結論も同じ意見だったのである。

これまでは、まだ、「国内においては、量産分野での日本のモノづくりの使命はおわった。」という自論が仮説であって欲しいという淡い期待があった、しかし、メーカーの方々の認識も同じであったということに、ショックを覚えた。なぜなら、これまでの仮説が現実化してしまったからである。

高騰する円と、中国をはじめとする安い労働力の生産拠点が勃興する中では、数十万というロットでの量産モノづくりを国内で行うことの、経済的なメリットはもはや無いと言った方が適切だろう。

国内での量産は終わったということであれば、これから数十万という大量ロットを主とするモノづくりから、数十~数千単位での「マイクロ・モノづくり」に日本の中小製造業をはじめとした製造業はシフトする必要がある。

少量生産のものを、できるだけ高い付加価値をつけて、販売ルートにのせることが、「マイクロ・モノづくり」である。それこそが、日本のモノづくりの火を残す最後の手段になるであろう。

仮に日本が、「マイクロ・モノづくり」の道を選択するとなると、付加価値が高く、1種類のロットが数十~数千という製品を生産・販売して利益を稼ぎ出すという体質になっていかなければならない。

そのバリエーションも、1000~1万種類もあればその中で大ヒットとなる製品もいくつか出てくるであろう。大ヒット製品は、国内から海外への生産へ委託されて行く。

そして、それらの「マイクロ・モノづくり」製品の企画・開発するのは、日本の大手メーカーではなく、動きの速いモノづくりベンチャーや中小製造業になると考えている。

しかしながら、これまで、中小製造業は製品を自ら企画・開発するという事をおこなってこなかったので、…

「はた(傍)をらく(楽)にする」を作り出すこと。大企業の大切な仕事。

我々の会社は、中小製造業が最終製品を開発して販売することを支援している。
もともとは、リーマンショックによって、大手メーカーが海外進出するに伴い、国内で失われてしまった仕事を、製造業自ら生み出し、それを価値として売ってゆくということを中小企業自らが行うことを支援している会社である。
今回の震災で、数多くの東北地方の製造業が失われてしまった。
その中には、水産加工業者もあるし、伝統的な工芸品を製造・販売していた会社もあっただろう。また微細で精密な部品を作っていた製造業もあるだろう。
会社や工場が失われたということは、それまでそこで働いていた人たちの雇用が大幅に失われてしまったということだ。
事実を淡々とつたえる、アナウンサーのように、「雇用が失われました」と一言で言ってしまうと、その言葉の背景にある数多くの意味が伝わって来ない。
目を閉じて、あなたが、ある日突然、何の前触れも無しに会社が津波で流され、「職を失う」といった状況になった場合、どのような感情を持つのか、想像してみて欲しい。
まず、感じることは、家族を養うための不安だろうか、家のローン返済や、子供の教育費用や、健康保険、国民年金のことだろうか。
あなたは、自宅も流され、避難所での生活を余儀なくされる。
一呼吸おいて、あなたが避難所で、毎日「うつうつ」として生活をしている状況を想像してみて欲しい。
避難所での生活も1ヶ月も経過すると配給される物資は日に日に数も増え、内容も充実して来る。
しかし、未来もみえず、そう、毎日、避難所で毛布にくるまってうつうつと過ごしている日々。避難所生活も1ヶ月を超えると、余震への恐怖よりも、自分が何もしていない事自体の恐怖が上回る。
そこには、本当に気の滅入る空間だ。ちょっとでもいい、この避難所から外に出て、世の中に為に、意味のある何かをしてみたい。そう感じるはずだ。
そこに、この避難所の近くの商工会議所に東海地域の中小企業から車に乗ったイキいい配電盤の製造・販売会社の経営者が来て、東北を立て直すための仕事づくりを一緒につくろうと声をかけてまわったという噂を耳にする。
働く場所は東海地方になるが、仕事も提供してもらえるだけではく、住居も提供してもらえるということ。また、将来的には、地元に戻ってもらい一緒に工場を運営してらいたい人を探していると。
最初は、本当にそんな都合の良いはなしがあるのかと半信半疑と感じ、…