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スイス型モノづくりはこれからの日本のモノづくりのひとつのカタチ

本日、Twitter経由で知り合った、スイスの時計産業にくわしいライターの方と面談をした。

スイスの時計産業では、時計ベンチャーが、ボコボコと創業しているとのこと。

世界に中国製の安い製品が広まった反動なのだろう、富裕層はより高価なもの、価値のあるモノを求めるようになった。

有名な時計メーカの中で実力をつけた、「時計プロデューサー」たちが、独立し、そこにVCや銀行が資金を投下して、会社を立ち上げるという動きが起きているとのこと。

これこそ、まさに、当社の目指している、「マイクロモノづくり」である。

そのライターの方のご意見ではプロデューサーに必要な要素は、「プロデューサーに求められる要素は三つだけ。モノが分かっていること(「知っている」ではない)、最終需要家の姿をちゃんと見ていること、そしてセルフプロデュースが上手いこと。これだけかなと思います。」ということである。


それにあえて、1つの要素を付け加えるとすると、「リスクを自ら背負う意志」だと思う。


わたしが、以前取材した「ユビタマゴ」の事例でも、窮地に追いやられた中小製造業の社長、自らが金型代金を負担し、販路を開拓するリスクを負って世に出した「ユビタマゴ」という美顔器が、大成功を収めた。


そこには、リスクを自ら負って、そのモノづくりを成功させるという、「意志」と「腑」が必要だと考えている。

スイスの時計は、時計プロデューサーがおり、そこに資本を投資する投資家がおり、モノづくりを支える高い技術をもつサプライヤーおり、そして、最後にもっとも重要なその時計を購入するユーザーがいる。


スイス型モノづくりは日本のモノづくり産業の今後をのひとつのカタチに成り得るとおもう。大量生産、大量消費の道をあきらめ、少量生産、高付加価値少量消費の道を作る。まさにマイクロモノづくりの思想だ。

しかし、日本のモノづくりと違い、スイス型モノづくりには大きなアドバンテージがある。それはすでに「スイスの時計」というブランドができあがっており、有名時計プロデューサーが新しい会社を起こし、その製品をリリースする段階で、世界中の販売エージェントが集まってくることだ。


スイスの時計産業では、すでに時計ディーラーという販売ルートが世界中にあり、製品の品質とセンスが良ければ、そのルートに乗せるだけで製品が売れてゆくという構造がある。

これは、シリコンバレーのネットベンチャーが製品をリリースして、世界を席巻できるのに似ている、インターネットという販路がそこにあるので、単純にWEBを公開すれば良いということだ。

モノづくりを事業として回す時に、最も大変なところはその製品の販路をいかにつくるのかということに尽きると考えている。

全く新たなカテゴリーの製品をリリースするときに、その販路を切り開くパワーは並大抵なものではない、それは、その製品を開発するのと同等かそれ以上の労力を必要とする。

enmono社の大きな課題として、モノづくりにおいて、販路をいかにして効率的に開拓出来るのかということがある。

これは、スイス時計のブランディングが非常に参考になる。モノづくりの物語をいかにして組み立て、そのメッセージをどれだけわかりやすく世界に発信していくことができるのかという戦略性が非常に重要だ。戦略を考え、実行するのが当社のミッションのひとつになる。

いずれにせよ、本日は、非常に良い刺激を受けた、またスイスのモノづくり事情を、今回知り合ったライターの方を介して少しづつ紹介して行きたいと思う。

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