昨日、我々が探し求めていた、理想的な「モノづくりプロデューサー」の活動を行っていらっしゃる会社を訪問した。
ミツワ株式会社である。ミツワの三輪社長とは前の会社からのお付き合いである。
ミツワは化粧品会社向けの什器などをオーダーメードで製作していた。この会社は、もともとプラスチックの射出成形メーカーであった。大手の化粧品メーカーから依頼をもらい、製作をしてメーカーに納めるといった一般的な町工場であった。
しかしながら、リーマンショック後の不況の影響で、主力の化粧品などの什器の製作の仕事や、プラスチック射出成形の仕事は、受注はあっという間に減っていったと言う。
もともと、先代社長の次代から、『発明アイディを買う300人の社長』という本に掲載されるほど、一般の方や異業種でモノづくりしたいモノづくり起業家たちから、様々なアイディア商品の企画が持ち込まれる会社だった。
そんな中で、あるデザイン会社から整体師の方が考案した、マッサージやエステシャンの3本の指を再現した美顔器の試作の話が持ち込まれた。
当初の基本的な構造は現在出荷している製品とほぼ同じだが、残念ながら量産を前提としたモノづくりに適したデザインにはなっていなかった。そして苦労の末に、その試作品を仕上げ、納品をした。
しかしながら、その後、量産の話はでなかった。依頼者の整体師の方が、量産化するのに十分な資金を持ち合わせていなかったということが、理由だったと言う。
試作品納入後から、1年ほど連絡がなかった。しかし、多くの試作品が持ち込まれる中で、なぜか、この美顔器の試作品だけが、三輪社長の心の中でなんとなく気になっていた。そこで、整体師の方に、直接連絡をとり、量産化へ向けての説得を試みたという。問題は、発案者の整体師の方に開発資金が不足しているということだった。
そこで、三輪社長は決断を下す。設計費用・金型製作費用など全てミツワで負担をするので、製造と独占販売権を譲って欲しい、整体師の方には売れた分の中からロイアリティをお支払いをすると条件を提示した。
交渉の結果、製造・販売のリクスをミツワが負担することで、本製品の製品化が決定した。
しかしながら、実際に製品が出来上がってきても、販路を開拓するのも苦労の連続だったという。営業は三輪社長自らが、大手百貨店に持ち込み商談をおこなったが、ほぼ全部が門前払いだったという。
仕方なく、近くの知り合いの美容院に製品を数個おいて使って見てもらったところ、「小顔になった」というクチコミで数個が売れ始めた。
この美容院で売れ始めたという実績をもとにして、美容院にはさみやシャンプーなどをおろす、一次問屋へのアプローチをおこなったところ、こちらでも評価をいただき、扱っていただけることになった。
その後、TVショッピングなどにも評価をいただき、採用になった。TVショッピングでは、放映中に実際に整体師の方に顔半分の施術をしていただき、顔半分が小顔になることをカメラの前で証明。その整体師の指と同じ効果が、この美顔器を使えば自宅で再現できるというようなプロモーションをおこなったところ、大ヒットにつながった。
ここで三輪社長から印象深いコメントをいただいた、「製品を開発・生産するよりも、実際に販売する労力の方が遥かに大きい」と。製品を生産するよりも、販売するコストと労力が大きいことは、これまでメーカーからの依頼で製品を製造、納入してきた中小製造業には考えがつかなかったのだろう。
現在、開発した「ユビタマゴ」はバージョン1、バージョン2とあわせて約5万台が販売されたという。
このヒットの要因を尋ねたところ、企画者である整体師の方と、モノづくりのリスクを負った三輪社長との信頼関係が大きいというコメントをいただいた。
もともとこの企画は、ミツワ自身にはなかったものである。整体やエステという業界の知識もなかったし、そのなかでどのような施術がされるか、それをどのような製品に落とし込めば良いという発想そのものがなかった。
したがって、その企画を持ち込んだ方と、その製造・販売のリクスを負担するミツワとの双方が相互を尊敬、信頼することでモノづくりや、マーケティングなどもスムーズにすすみ、ヒットにつながったという。
ミツワは間違いなく、当社が新しい日本の製造業のかたちとして推奨する、「マイクロモノづくり」をまさに実践して高収益を上げていらっしゃる会社であり、その中で自ら製品開発のリスクを負い、整体師の方と協力してマーケティング、販売をおこなった三輪社長こそ、未来の日本の中小製造業が目指す、「モノづくりプロデューサー」だと考える。
今回の事例で、製品がヒットしたポイントを以下取り上げる:
・企画持ち込み者と製造者の相互の尊敬・信頼関係の構築。
・製造者が自ら資金を提供し、リスクを負うこと。
・製造者と企画者が協力して、マーケティング、営業を行うこと。
三輪社長とのお話の中で、ユビタマゴを開発していた当初は、仲間の製造業から、「本業を放置して、わけの分からないものの開発にのめりこんで、会社は大丈夫なのか?」という心配の声が多く上がったという。
まだ多くの中小製造業が日本国内での万単位でのロットの量産はその経済的な合理性からみて、戻ってこないことは間違いないのに、国内の量産が戻ってくると信じている。
そのことに早く気がついた、製造業が、まさにミツワのように、自社の持っているリソースをもとにして新たな中小製造業、「中小製造業 Ver2.0」へと生まれ変わるのであろう。
ミツワ株式会社である。ミツワの三輪社長とは前の会社からのお付き合いである。
ミツワは化粧品会社向けの什器などをオーダーメードで製作していた。この会社は、もともとプラスチックの射出成形メーカーであった。大手の化粧品メーカーから依頼をもらい、製作をしてメーカーに納めるといった一般的な町工場であった。
しかしながら、リーマンショック後の不況の影響で、主力の化粧品などの什器の製作の仕事や、プラスチック射出成形の仕事は、受注はあっという間に減っていったと言う。
もともと、先代社長の次代から、『発明アイディを買う300人の社長』という本に掲載されるほど、一般の方や異業種でモノづくりしたいモノづくり起業家たちから、様々なアイディア商品の企画が持ち込まれる会社だった。
そんな中で、あるデザイン会社から整体師の方が考案した、マッサージやエステシャンの3本の指を再現した美顔器の試作の話が持ち込まれた。
当初の基本的な構造は現在出荷している製品とほぼ同じだが、残念ながら量産を前提としたモノづくりに適したデザインにはなっていなかった。そして苦労の末に、その試作品を仕上げ、納品をした。
しかしながら、その後、量産の話はでなかった。依頼者の整体師の方が、量産化するのに十分な資金を持ち合わせていなかったということが、理由だったと言う。
試作品納入後から、1年ほど連絡がなかった。しかし、多くの試作品が持ち込まれる中で、なぜか、この美顔器の試作品だけが、三輪社長の心の中でなんとなく気になっていた。そこで、整体師の方に、直接連絡をとり、量産化へ向けての説得を試みたという。問題は、発案者の整体師の方に開発資金が不足しているということだった。
そこで、三輪社長は決断を下す。設計費用・金型製作費用など全てミツワで負担をするので、製造と独占販売権を譲って欲しい、整体師の方には売れた分の中からロイアリティをお支払いをすると条件を提示した。
交渉の結果、製造・販売のリクスをミツワが負担することで、本製品の製品化が決定した。
しかしながら、実際に製品が出来上がってきても、販路を開拓するのも苦労の連続だったという。営業は三輪社長自らが、大手百貨店に持ち込み商談をおこなったが、ほぼ全部が門前払いだったという。
仕方なく、近くの知り合いの美容院に製品を数個おいて使って見てもらったところ、「小顔になった」というクチコミで数個が売れ始めた。
この美容院で売れ始めたという実績をもとにして、美容院にはさみやシャンプーなどをおろす、一次問屋へのアプローチをおこなったところ、こちらでも評価をいただき、扱っていただけることになった。
その後、TVショッピングなどにも評価をいただき、採用になった。TVショッピングでは、放映中に実際に整体師の方に顔半分の施術をしていただき、顔半分が小顔になることをカメラの前で証明。その整体師の指と同じ効果が、この美顔器を使えば自宅で再現できるというようなプロモーションをおこなったところ、大ヒットにつながった。
ここで三輪社長から印象深いコメントをいただいた、「製品を開発・生産するよりも、実際に販売する労力の方が遥かに大きい」と。製品を生産するよりも、販売するコストと労力が大きいことは、これまでメーカーからの依頼で製品を製造、納入してきた中小製造業には考えがつかなかったのだろう。
現在、開発した「ユビタマゴ」はバージョン1、バージョン2とあわせて約5万台が販売されたという。
このヒットの要因を尋ねたところ、企画者である整体師の方と、モノづくりのリスクを負った三輪社長との信頼関係が大きいというコメントをいただいた。
もともとこの企画は、ミツワ自身にはなかったものである。整体やエステという業界の知識もなかったし、そのなかでどのような施術がされるか、それをどのような製品に落とし込めば良いという発想そのものがなかった。
したがって、その企画を持ち込んだ方と、その製造・販売のリクスを負担するミツワとの双方が相互を尊敬、信頼することでモノづくりや、マーケティングなどもスムーズにすすみ、ヒットにつながったという。
ミツワは間違いなく、当社が新しい日本の製造業のかたちとして推奨する、「マイクロモノづくり」をまさに実践して高収益を上げていらっしゃる会社であり、その中で自ら製品開発のリスクを負い、整体師の方と協力してマーケティング、販売をおこなった三輪社長こそ、未来の日本の中小製造業が目指す、「モノづくりプロデューサー」だと考える。
今回の事例で、製品がヒットしたポイントを以下取り上げる:
・企画持ち込み者と製造者の相互の尊敬・信頼関係の構築。
・製造者が自ら資金を提供し、リスクを負うこと。
・製造者と企画者が協力して、マーケティング、営業を行うこと。
美顔器「ユビタマゴ」
開発した「ユビタマゴ」と三輪社長
三輪社長とのお話の中で、ユビタマゴを開発していた当初は、仲間の製造業から、「本業を放置して、わけの分からないものの開発にのめりこんで、会社は大丈夫なのか?」という心配の声が多く上がったという。
まだ多くの中小製造業が日本国内での万単位でのロットの量産はその経済的な合理性からみて、戻ってこないことは間違いないのに、国内の量産が戻ってくると信じている。
そのことに早く気がついた、製造業が、まさにミツワのように、自社の持っているリソースをもとにして新たな中小製造業、「中小製造業 Ver2.0」へと生まれ変わるのであろう。
文責:三木
コメント
コメントを投稿